脳脊髄液減少症

脳脊髄液減少症とは，脳脊髄液腔から髄液が持続的ないし断続的に漏出することによって脳脊髄液が減少し，頭痛，頚部痛，眩暈，耳鳴り，視機能障害，倦怠など様々な症状を呈する疾患のことをいいます。

脳脊髄液が減少することで頭痛等の症状が出現する疾患については，１９３８年にドイツの神経学者Schaltenbrandにより初めて報告されました。当初，疾患患者の多くで髄液圧が低い状態が見られたことから，髄液圧の低下が症状の原因と考えられ，これらの疾患群は「低髄液圧症候群」などと称されるようになりました。

しかし，その後，同様の疾患でも低髄液圧を呈さない症例があることが明らかとなったことから，髄液量の減少が疾患の本質であることを捉えて「脳脊髄液減少症」の名称が提唱されました。また，脳脊髄液が漏出して減少するという病態が存在することは是認できるものの，現実に脳脊髄液の量を臨床的に計測できる方法がないことから，脳脊髄液減少症に包含される概念として「脳脊髄液漏出症」という用語が用いられることもあります。